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税理士法

税理士法改正について②

 令和3623日付で日本税理士会連合会のホームページに「税理士法に関する改正要望書」がアップロードされました。改正要望のトップに掲げられているのが「税理士の業務のICT化推進の明確化」です。内容は次のようになっています。

 「経済のデジタル化、グローバル化の進展等の環境変化に伴う税理士制度の継続的発展を期するため、電子申告・納税、電子帳簿、マイナポータルの利活用など税理士の業務のICT化の推進を通じて、納税義務者の利便向上に努めることを明確化すべきである」

 ICT化は税理士にとっては事務処理レベルの問題であり、各々が個別に対応すべきものであると思われます。三年ほど前、近畿税理士会情報化対策部が総務省の職員を講師に招いて研修会を開きました。その折、総務省は税務行政を円滑にするためクラウド会計を推進し、国税局にアクセス権を与えると明言していました。クラウド会計を紹介するパワーポイントの資料にfreeeと弥生会計クラウドの2社のみ、そのロゴマークが表示されてあったのには驚きましたが、その職員はICT化に対する今後の税理士業務のあり方についての質問に、「個々に対応して下さい」と一言そっけなく答えていました。

 この職員の回答のように、ICT化への対応は各々税理士が個々に取り組むべき課題であると思われます。それをどのように条文化するのか、日税連制度部の対応が注目されます。


税理士法改正について①


  条文   税理士法第1条(税理士の使命)税理士法第49条(税理士会)


 令和3年度税制改正大綱の検討事項の8番目に税理士制度が取り上げられています。内容は下記の通りです。

 「税理士制度については、ウィズコロナ・ポストコロナの新しい社会を見据え、税理士の業務環境や納税環境の電子化といった、税理士を取り巻く状況の変化に的確に対応するとともに、多様な人材の確保や、国民・納税者の税理士に対する信頼の向上を図る観点も踏まえつつ、税理士法の改正を視野に入れて、その見直しに向けて検討を進める。」

 文中にある業務環境・納税環境の電子化といった、各々税理士が個別に対応しなければならない実務的側面以上に「税理士を取り巻く状況の変化」が著しいのは、税理士試験受験者数の激減です。平成23年度に4万9510人だった受験者数は、令和2年度には2万6673人まで減少しました。諸先輩方の叡智と努力によって築かれた税理士制度が絶滅危惧種の扱いを受けないためには、多様な人材の確保のために試験制度に手を加えるのではなく、有能な人材が目を向けるような制度にしなければ意味がありません。

 税理士法第1条(税理士の使命)は「税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。」とあります。昭和55年の法改正以前は、第1条は税理士の「使命」ではなく「職責」とされており、「税理士は、中立な立場において、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務を適正に実現し、納税に関する道義を高めるように努力しなければならない」と規定されていました。

税理士の立場が「中立な立場」から「独立した公正な立場」へ改正されたことは非常に重要な意味を持っています。改正前は納税義務者と税務当局の「いずれにも偏らない」中立な立場を意味する極めて消極的な性格を持つものであったのに対し、改正後の「公正な立場」によって主体的な判断が可能となり、その行為がなにびとによっても拘束されることのない「独立」した立場によってなされることが明確化されたのです。

 さて税理士法第1条を実現するために設立されたのが税理士会及び日本税理士会連合会です。その役割は、税理士法第49条6項において「税理士の使命及び職責にかんがみ、税理士の業務の遵守及び税理士業務の改善進歩に資するため、支部及び会員に対する指導、連絡及び監督に関する事務を行う」と示されています。税理士会が指導、連絡だけではなく、「監督」の権限も付与されているのは、自治団体である税理士会に自主監督権を認め、会員の規律について自ら規制せしめるためであるとされています。ところが一方で第49条の17(総会の決議の取消し)では「財務大臣は、税理士会又は日本税理士会連合会の総会の決議が法令又はその税理士会若しくは日本税理士会の会則に違反し、その他公益を害するときは、その決議を取り消すべきことを命ずることができる。」との規定があります。税理士が、なにびとにも拘束されず独立して公正な判断を行わなければならない立場であるが故に、その監督権を付与された税理士会及び日本税理士会連合会が法令や自らの会則に違反するはずがなく、財務大臣に総会の決議の取消しを認める第49条の17は過剰な規定であると言わざるを得ません。


「将来的税務相談」について


  条文   税理士法第2条(税理士の業務)


 ここでいう「将来的税務相談」とは、金融機関やファイナンシャル・プランナーが行う相続税額のシミュレーションや自社株評価等が含まれます。この「将来的税務相談」が税理士業務であると解されれば、税理士資格のない者がこの行為を行った場合は税理士法違反となります。何故ならば「税理士業務」は「無償独占」だからです。

 さて税理士法は、第2条1項3号、及び通達2-6において、「税務相談」を「税務官公署に対する申告等、税務官公署に対してする主張・陳述又は申告書等の作成に関し、租税の課税標準等の計算に関する事項につき、納税義務に関する具体的な質問に対して答弁し、指示し、意見を表明することをいう」と定義しています。従って仮説事例における税額計算や、現実の納税義務を伴わない税額計算を行う行為は税理士業務には含まれず、金融機関等が積極的に行っている「将来的税務相談」は税理士法に違反していないとする解釈があります。この解釈の背景には、「将来的税務相談」を「税理士業務」に含めた場合に税理士が負う責任が考慮されていると解されます。前述したように「税理士業務」は「無償独占」であるため、報酬の有無に関わらず責任が発生するからです。

 一方で将来発生する相続に関して具体的な内容が明確化されている場合、税額の試算結果が将来の税務申告の内容をなすものになることから、「税務相談」の範囲に含まれるとする意見もあります。2019年4月17日に出された日本税理士会連合会制度部による「次期税理士法改正に関する答申」において、この「将来的税務相談」の位置付けは答申項目とされず、金融機関等が行う「将来的税務相談」が税理士法違反となるかどうかは目下のところ明確にされておりません。


弁護士法23条照会と税理士の守秘義務について


  条文   税理士法第38条(守秘義務)


 弁護士法23条による弁護士会照会は、法律で規定されている制度であり、原則として回答・報告する義務があり、例外として照会の必要性・相当性が欠けている場合には回答・報告しなくてもよいとされています。一方、税理士法は第38条で「税理士は、正当な理由がなくて、税理士業務に関して知り得た秘密を他に漏らし、又は窃用してはならない」と規定しています。この「正当な理由」に弁護士法23条照会の報告義務が含まれるかどうかをめぐっては、大阪高裁平成26年8月28日判決において、税理士法人が23条照会に基づいて行った情報開示が不法行為であるとされました。これは税理士法38条が、「正当な理由があれば秘密を開示しなければならない」と定めているわけではないので、23条照会に基づいて顧客情報を開示した場合には守秘義務違反に問われないと法定されているわけではないとの解釈に依っています。この解釈は、照会請求の必要性が弁護士会により認定されているにもかかわらず、税理士法基本通達による「正当な理由」に示されている「法令に基づく義務」において、必ずしも弁護士法23条照会の報告義務が優先するわけではないことを示しているとも解されます。


名義貸し行為の指標(メルクマール)について


  条文   税理士法第37条の2(非税理士に対する名義貸しの禁止)


 税理士業務(法第2条第1項)については税理士の無償独占業務とされているにもかかわらず、税理士自身が無資格者のにせ税理士行為の幇助として名義貸し行為に手を染めることは税理士制度及び申告納税制度を破壊するに等しい行為であり、決して許されるものではないとして、日本税理士会連合会綱紀観察部は許されるべきでない行為の指標として以下の3点を挙げています。(平成29年1月26日付)

①税理士が自らの判断で税務書類を作成していない
②税理士が納税者から直接税理士業務の委嘱を受けていない。
③税理士が報酬を納税者から直接収受していない。

  PDF   資料①


M&A

子会社設立のお知らせ

令和5年3月1日、アルグランド税理士法人は、事業承継を専門に行うアルグランドファイナンシャルアドバイザリー合同会社を設立致しました。

中小企業庁「M&A支援機関登録制度」登録のお知らせ

「M&A支援機関登録制度」は、2021年4月に中小企業庁から公表された「中小M&A推進計画」に基づき、中小企業が安心してM&Aに取り組める基盤を構築するために創設されました。本制度に登録されたM&A支援機関の支援を受けた中小企業においては、仲介手数料やFA(ファイナンシャルアドバイザー)費用等が、中小企業庁が実施する「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)」の補助対象となります。
当社は、この「M&A支援機関登録制度」において、M&A支援機関として登録されましたので、お知らせいたします。

中小PMIガイドライン(仮称)策定小委員会の設置について

M&Aを事業の成長につなげるためには、M&A実施後の経営統合(PMI: Post Merger Integration)が重要な課題となります。しかしながら、譲受側においてM&A前後の取組の重要性に関する認識不足や、PMIのための独自の予算等のリソースが確保されていることは少ない状況です。加えて、PMIにおいて支援すべき内容についてM&A支援機関側での共通認識が形成されておらず、中小企業向けにPMIを支援する事業者もまだ極めて少ないという課題もあります。
以上を踏まえ、中小企業庁では、中小M&Aにおいて望まれるPMIのあり方及びPMIの進め方を示すべく、中小M&AにおけるPMIに関する指針を策定するため、中小PMIガイドライン(仮称)策定小委員会を設置し、その第1回を10月5日(火曜日)に開催します。尚、本小委員会に関する審議は特定の企業、経営者、従業員等に係る事例に言及する可能性があるため、原則として議事は非公開となります。また本小委員会の傍聴はできません。
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/jigyousyoukei_guideline/001.html

当社が「中小M&Aガイドライン」の遵守を宣言した内容について

アルグランド税理士法人はFA契約の締結について、業務形態の実態に合致したFA契約を締結し、契約締結前に依頼者に対しFA契約に係る重要な事項について明確な説明を行い、依頼者の納得を得ます。

Ⅰ 特に以下の点は重要な点ですので説明します。
(1)譲り渡し側・譲り受け側の両当事者と契約を締結し双方に助言する仲介者、一方当事者のみと契約を締結し一方のみに助言するFAの違いとそれぞれの特徴
(2)提供する業務の範囲・内容(マッチングまで行う、バリュエーション、交渉、スキーム立案等)
(3)手数料に関する事項(算定基準、金額、支払時期等)
(4)秘密保持に関する事項(秘密保持の対象となる事実、士業等専門家等に対する秘密保持業務の一部解除等)
(5)専任条項(セカンド・オピニオンの可否等)
(6)テール条項(テール期間、対象となるM&A等)
(7)契約期間
(8)依頼者がFA契約を中途解約できることを明記する場合には、当該中途解約に関する事項

Ⅱ 最終契約の締結について、契約内容に漏れがないよう依頼者に対して再度の確認を促します。

Ⅲ クロージングについて、クロージングに向けた具体的な段取りを整えた上で、当日には譲り受け側から譲 渡対価が確実に入金されたことを確認します。

Ⅳ 専任条項については、特に以下の点を遵守して、行動します。

  • 依頼者が他の支援機関の意見を求めたい部分を仲介者・FAに対して明確にした上、これを妨げるべき合理的な理由がない場合には、依頼者に対し、他の支援機関に対してセカンド・オピニオンを求めることを許容します。ただし、相手方当事者に関する情報の開示を禁止したり、相談先を法令上又は契約上の秘密保持義務がある者や事業承継・引継ぎ支援センター等の公的機関に限定したりする等、情報管理に配慮します。
  • 専任条項を設ける場合には、契約期間を最長でも6か月~1年以内を目安として定めます。
  • 依頼者が任意の時点でFA契約を中途解除できることを明記する条項等(口頭での明言も含む)も設けます。

Ⅴ テール条項については、特に以下の点を遵守して行動します。

  • テール期間は最長でも2~3年以内を目安とします。
  • テール条項の対象は、あくまで当該M&A専門業者が関与・接触し、譲り渡し側に対して紹介した譲り受け側のみに限定します。

Ⅵ 上記の他、中小M&Aガイドラインの趣旨に則った行動をします。

中小企業事業再編投資損失準備金制度について

 中小企業事業再編投資損失準備金は、中小企業者のうち令和6年3月末までに事業承継等事前調査に関する事項が記載された経営力向上計画の認定を受けた者が、株式取得によってM&Aを実施する場合に、手数料等を含む株式等の取得価額として計上する金額の70%までの割合の金額を準備金として積み立てた時、その事業年度に損金算入ができる制度です。株式の取得価額は10億円以下に限られ、据置期間の5年間経過後に5年間かけて均等額で準備金を取り崩し益金参入します。また簿外債務が発覚した際などに減損処理を行った場合や、株式売却後の取崩要件に該当した場合にも準備金を取り崩します。

 この制度の活用に当たっては、まず買収相手との間で基本合意等がなされた後、経営力向上の内容に株式取得を含み、かつ事業承継等事前調査の内容を記載した経営力向上計画を策定し、主務大臣の認定を受けます。続いて認定計画の内容に従って株式取得を実行した後、主務大臣に対して事業承継等を実施したことと事業承継等事前調査の内容について報告し、確認書の交付を受けます。この要件を満たした上で、税務申告書に経営力向上計画の申請書と認定書、及び主務大臣が交付した確認書を添付することによって準備金積立額の損金算入が可能となります。

 経営力向上計画認定申請時と株式取得の報告時には、それぞれ「事業承継等事前調査チェックシート」を作成し、添付しなければなりません。

 また事後報告として計画期間の間の毎事業年度終了後、事業の状況等に係る報告書「事業承継等状況報告書」を認定を受けた主務大臣に提出する必要があります。 

https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/shigenshuyaku_zeisei.html

  EXCEL   事業承継等事前調査チェックシート

経営資源集約化税制における経営力向上計画の申請受付開始について

 令和3年度税制改正により創設された「中小企業の経営資源の集約化に資する税制」について、制度利用のために必要な経営力向上計画の申請受付が開始しました。
 本制度は、経営資源の集約化(M&A)によって生産性向上等を目指す計画(経営力向上計画)の認定を受けた中小企業者が、計画に基づくM&Aを実施した場合に、以下の3つの措置を活用できる制度となります。

 1.設備投資減税(中小企業経営強化税制)
 2.雇用確保を促す税制(所得拡大促進税制)
 3.準備金の積立を認める措置(中小企業事業再編投資損失準備金)

詳細は、中小企業庁ホームページをご確認願います。
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/shigenshuyaku_zeisei.html


中小企業M&A推進のための税制措置について

 M&Aにおけるデューディリジェンスによって把握できなかった簿外負債等のリスクに対応するため、下記の税制が創設されています。
 「青色申告書を提出する中小企業者(適用除外事業者に該当するものを除く。)のうち中小企業等経営強化法の改正法の施行の日(令和3年4月1日)から令和6年3月31日までの間に中小企業等経営強化法の経営力向上計画(経営資源集約化措置(仮称)が記載されたものに限る。)の認定を受けたものが、その認定に係る経営力向上計画に従って他の法人の株式等の取得(購入による取得に限る。)をし、かつ、これをその取得の日を含む事業年度終了の日まで引き続き有している場合(その株式等の取得価額が10億円を超える場合を除く。)において、その株式等の価格の低落による損失に備えるため、その株式等の取得価額の70%以下の金額を中小企業事業再編投資損失準備金として積み立てたときは、その積み立てた金額は、その事業年度において損金算入することができます。(この準備金は、その株式等の全部又は一部を有しなくなった場合、その株式等の帳簿価額を減額した場合等において取り崩すほか、その積み立てた事業年度終了の日の翌日から5年を経過した日を含む事業年度から5年間でその経過した準備金残高の均等額を取り崩して、益金算入します。)」

  PDF   資料①


中小企業の経営資源集約化について

 中小企業庁が設置した「中小企業の経営資源集約化等に関する検討会」は4月28日、これまでの議論の内容を取りまとめた中小企業M&A推進計画を策定、公表しました。

  PDF   資料①

 尚、この検討会は、事業承継円滑化という目的ばかりでなく、生産性向上という目的においてもM&Aが中小企業の経営資源集約化を推進するとして、下記の要領で行われました。

開催日
第1回 2020年11月11日

  PDF   資料②

[概要]

(1)中小企業におけるM&Aの意義

 経営者の高齢化への対応だけでなく、窮境からの脱出という側面がある

(2)中小企業におけるM&Aの実施状況

  • 案件の規模は小さくなっているものの件数は減っていない
  • 新型コロナウイルス感染症の影響を受けてニーズはさらに増えていくと考えられる
  • 業績が悪く難しい案件が多いため経営の立て直しができる優秀な人材が必要
  • 事業引継ぎ支援センターの役割について再検討が必要

(3)中小企業におけるM&Aの円滑な実施に向けた環境整備

  • 成長しなくてよいと考えている事業者に対して明確なインセンティブが必要
  • M&Aを支援する事業者を法的資格によって区別できる仕組みが必要
  • 株主が多くて手続きが進められない場合はスクイーズアウトも必要

(4)M&A実施後の成長に向けた取組

  • 財務内容把握のためのデューディリジェンスは必須
  • ポスト・マージャー・インテグレーション(PMI)の理解と実践が不可欠

(5)再生・廃業・創業支援の取組との連携 等

  • 後継者人材バンクの拡大や事業引継ぎ支援センターの活用

開催日
第2回 2020年12月22日

  PDF   資料③

[概要]

(1)新たな税制・予算措置について

  • 補助金の具体的な制度設計の中で譲渡側・譲受側双方にアドバイザーを任命できるような仕組みが必要

(2)中小M&Aの類型と検討の視点

  • コロナ過の現状で債務過多の場合もあり、メザニンファイナンスの活用も検討すべき

(3)小規模・超小規模M&Aにおける対応

  • 小規模企業同士のM&Aは、生産性向上に値しない
  • 中小企業庁の事業承継診断を改善すべき
  • 事業引継ぎ支援センターをより活用し易くするべき
  • 士業団体の連携の枠組みが重要
  • 契約レビューではなく、意思決定や相談の段階でアドバイザーの関与が必要
  • 表明保証保険はモラルハザードが起きないよう慎重な運用が必要

開催日
第3回 2021年1月25日

  PDF   資料④

[概要]

(1)中小M&Aにおける制度的な課題

  • 譲渡側の株主状況の実態を早期に把握することが必要
  • 株主名簿の不備に応ずるため全部取得条項付種類株式を使うスキームが有効
  • 許認可引継ぎについては法整備や行政の対応改善が必要

(2)中小M&Aに係る支援機関の取組

  • 利益相反への対応を検討・工夫することが必要
  • 仲介業者、事業引継ぎ支援センターの人材育成が重要

(3)規模に応じた中小M&Aの推進

  • 小規模案件にとってはプラットフォームの活用が重要
  • M&A支援に関与する人々のインセンティブを考慮することが必要
  • 地方でM&Aビジネスを市場化させる視点が必要
  • M&Aを行った場合の株式価値について啓蒙が必要

開催日
第4回 令和3年2月24日

  PDF   資料⑤

[概要]

(1)大規模・中規模M&Aにおける対応

  • サプライチェーンの維持は重要であり、後継者不在の取引先への働きかけが考えられる
  • 地方では自治体主導で事業承継ネットワークの枠組みを活用することが必要
  • ステークホルダーの意思統一が重要
  • 事業承継診断に分析などの数値診断ツールを加え、より充実したものにする
  • より具体的なToDoリストを専門家の協力を得ながら作るべき
  • PMIまで意識の回っていないM&A支援機関のレベルアップが必要
  • 国が株価診断モデルを提示することも必要
  • ファンドの活用法と、その啓蒙が必要

(2)経営者保証問題への対応

  • 経営者やその後継者に対する財務面での経営者教育が必要
  • 保証を行う合理的な範囲を考慮すべき
  • 経営者保証ガイドラインの啓蒙が必要
  • 経営者保証を解除するためには金融機関への説得が必要

(3)事業再生・転廃業支援との連携

  • ステークホルダーの決断を後押しする役割を地域金融機関や専門士業が担っていくべきではないか
  • 事業再生支援においては金融機関との連携が重要
  • 事業引継ぎ支援センターの職員は判断に迷う微妙な案件について早めに専門家に相談するべき

開催日
第5回 2021年3月15日

  PDF   資料⑥

[概要]

「検討会取りまとめ骨子(案)」に沿って

  • 「工程表策定の趣旨と中小M&Aの意義」
  • 「中小M&Aの実施状況とこれまでの取組」
  • 「今後の中小M&A支援策の方向性」
  • 「中小M&Aに関する基盤の構築」
  • 「事業再生・転廃業支援との連携」
  • 「工程表のフォローアップ」

について討議が行われた


中小企業の経営資源集約化等に関する検討会取りまとめ(案)(   PDF   資料⑦ )

中小M&A支援計画概要(   PDF   資料⑧ )


吸収分割した分割子法人の消費税の取り扱いについて


  条文   消費税法第12条(分割等があった場合の納税義務の免除の特例)同法第37条(中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例)


 1930年に設立されたA社は、消費税が施行された1989年には年商が2億円規模の卸売企業でした。当時課税売上高が5億円を超えない企業は簡易課税を選択できたため、A社は「簡易課税選択届出書」を提出しました。その後1995年になり事業が拡大するとともに、簡易課税の選択適用限度額も引き下げられたため、A社は本則課税を適用することとなりました。ところが2000年に入るとA社は株主が変わったことで業態が変わり、2015年には基準期間の課税売上高が1,000万円以下となったため、「消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書」を提出することになります。
 2017年、X社は吸収分割を行い、A社を分割子法人としました。A社の基準期間課税売上高は1,000万円以下でしたが、X社の基準期間課税売上高が2,000億円であったため、消費税法第12条により課税事業者となりました。課税事業者となったA社の2017年度の課税売上高は50億円となりましたが、この年度のA社は簡易課税制度により申告することとなります。
 課税事業者の判定は分割親法人の基準期間によりますが、簡易課税の選択適用の判定は、分割子法人の基準期間によります。A社の場合、1989年に簡易課税制度を選択してから2017年に至る間「消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書」の提出はあったものの、「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出していなかったので、制度が継続していたことになります。


DX

Pan European Public Procurement Online(Peppol)について

 現在デジタル庁は、デジタルインボイスの導入に向けて日本仕様のPan European Public Procurement Online(通称Peppol)を世界標準とするための取組みを行っています。Peppolとは、電子文書をネットワーク上でやり取りするための「文書仕様」、「文書ルール」、「ネットワーク」の欧州向けの標準仕様で、売手のシステムから買手のシステムへの請求情報を、人材を介することなく直接データ連携する仕組みです。Peppolを利用することによって、ユーザーは既存のインターフェースで対応することが可能となり、負担が少なく、快適なUI/UXでデジタルインボイスのやり取りが可能となります。Peppolをベースとしたデジタルインボイスを採用している各国においては、特に中小企業を中心に、「事務負担の軽減」「低廉な対応コスト」「請求代金の迅速な回収」といった点が評価されています。

ギグワーカーと「記入済み申告書」について

 料理宅配サービスの配達員やライドシェアの運転手など、インターネット経由で単発の仕事を請け負うギグワーカーと呼ばれる人たちは、所得税法上個人事業主として扱われ、源泉徴収の対象外とされています。こういったギグワーカーが適正な申告を行うために考えられているのが、ヨーロッパ諸国で適用されている「記入済み申告書」制度です。

 この「記入済み申告書」は、課税当局が収集した税金計算に関する情報があらかじめ記載された申告書を納税者に提供し、当該納税者がその内容を確認して申告書を提出し税額を確定させる制度で、申告納税制度の一形態とされています。

 因みにドイツでは、個人が確定申告を行う場合、所得の種類ごとの所得額や所得控除額を申告書に記載するものの、納付すべき税額は記載せず、税務署の担当者が申告書に記載された所得額や所得控除額をもとに税額を計算します。このような税務署での税額計算は「査定」と呼ばれ、納税者は税務署から送付された「査定書」を受け取ってはじめて税金を納付することになります。従ってドイツにおける所得税の申告は、税務署が税額を確定させるため、申告納税制度法式ではなく、賦課課税方式となっています。一方「記入済み申告書」制度は、あくまでも納税者が内容確認を行い、申告書を提出し、税額の確定を行うので、申告納税制度の一形態として考えられています。

 ところで「記入済み申告書」制度を導入するためにはマイナポータルを利用しなければなりません。制度導入を考えるのであれば、現在0.02%と言われているマイナポータルの普及率を如何に高めるかが課題となるでしょう。


「リモート調査」について


  条文   国税通則法第74条の9(納税義務者に対する調査の事前通知等)国税通則法第74条の11(調査の終了の際の手続)


 令和3年6月11日に国税庁が発表した「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション―税務行政の将来像2.0-」の22頁には「Web会議システム等の活用」と題して、税務調査をリモートによって実施する「リモート調査」を拡大するとしています。

 一方、国税通則法第74条の9(納税義務者に対する調査の事前通知等)においては「税務署長等(国税庁長官、国税局長若しくは税務署長又は税関長をいう。以下第74条の11(調査の終了の際の手続)までにおいて同じ。)は、国税庁等又は税関の当該職員(以下同条までにおいて「当該職員」という。)に納税義務者に対し実地の調査(税関の当該職員が行う調査にあつては、消費税等の課税物件の保税地域からの引取り後に行うもの又は国際観光旅客税について行うものに限る。以下同条までにおいて同じ。)において第74条の2から第74条の6まで(当該職員の質問検査権)の規定による質問、検査又は提示若しくは提出の要求(以下「質問検査等」という。)を行わせる場合には、あらかじめ、当該納税義務者(当該納税義務者について税務代理人がある場合には、当該税務代理人を含む。)に対し、その旨及び次に掲げる事項を通知するものとする。」とあり、また同法第74条の11(調査の終了の際の手続)は、「税務署長等は、国税に関する実地の調査を行つた結果、更正決定等(第36条第1項(第2号に係る部分に限る。)(納税の告知)の規定による納税の告知を含む。以下この条において同じ。)をすべきと認められない場合には、納税義務者(第74条の9第3項第1号(納税義務者に対する調査の事前通知等)に掲げる納税義務者をいう。以下この条において同じ。)であつて当該調査において質問検査等の相手方となつた者に対し、その時点において更正決定等をすべきと認められない旨を書面により通知するものとする。」とあります。

 この条文にある「実地の調査」については、「国税通則法第7章の2(国税の調査)等関係通達の制定について(法令解釈通達)(「実地の調査」の意義)」において、「4-4 法第74条の9及び法第74条の11に規定する「実地の調査」とは、国税の調査のうち、当該職員が納税義務者の支配・管理する場所(事業所等)等に臨場して質問検査等を行うものをいう。」と定義されており、今後「リモート調査」の拡大に備えて、調査の事前・事後の手続規定の整備が必要になると思われます。


バーチャル株主総会について

 これまでの株主総会は、特定の日時に株主、取締役、監査役などが特定の場所(物理的に存在する会場)に参集して行われてきました。しかしこの場合、遠隔地にいる株主の参加が困難なことや、今般のコロナ過で大人数が一か所に密集することを避けねばならない状況になったため、企業の業態や規模、発展段階、株主構成の状況に応じた開催方法の選択が望まれました。

 こういった状況に鑑み、経済産業省は2020年2月26日に「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」を策定、2021年2月3日には「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド事例集」を公表しました。

「ハイブリッド型バーチャル株主総会」とは、従来のリアルな株主総会を開催しながら、その場に参加できない株主についてもインターネット等の手段を用いて、遠隔地からこれに参加・出席することを許容する形態を言います。実施ガイドによると、この「ハイブリッド型バーチャル株主総会」は、「参加型」と「出席型」の二つに分けられます。

「参加型」は、遠隔地などにいてリアルな株主総会の場に出席できない株主が、会社から通知された固有のIDやパスワードによる株主確認を経て、特設されたWEBサイト等で配信される中継動画を傍聴するような形態を言います。この場合、あくまでも傍聴という形をとるため、会社法上、総会に出席した株主により行うことが認められている質問(会社法314条)や動議(会社法304条等)といった議決権の行使ができません。従ってインターネット等の手段を用いて「参加」する株主は、書面や電磁的方法による事前の議決権行使や委任状等で代理権を授与する代理人による議決権行使が必要となります。また会社側においては、インターネットでは議決権を行使できない旨を、あらかじめ株主に対して招集通知書等で周知しておいた方がよいと思われます。

これに対して「出席型」は、インターネット等の手段を用いて、会場にいる株主と共に審議に参加した上、総会の決議にも加わるような形態を言います。現行の会社法の解釈においては、開催場所と株主との間で情報伝達の双方向性と即時性が確保されていれば、「出席型」ハイブリッド・バーチャル株主総会を開催することも可能であると考えられています。因みに経済産業省の事例集によると、2020年度の実施状況は上場会社のうち、ハイブリッド「参加型」を実施した会社が113社、「出席型」を実施した会社が9社となっています。

さて、上記の「ハイブリッド型」に対して、リアルな株主総会を開催せず、取締役や監査役等と株主がすべてインターネット等の手段を用いて総会に出席する形態が「バーチャルオンリー型株主総会」です。今般、産業競争力強化法において、会社法の特例として「場所の定めのない株主総会」に関する制度が創設されることにより、上場会社において「バーチャルオンリー型株主総会」の開催が可能となりました。

https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/keizaihousei/virtual-only-shareholders-meeting.html

 ところでインターネット等を用いて行う場合に懸念されるのが通信障害の問題です。経団連は「場所の定めのない株主総会」において通信障害が生じた場合、会社側・株主側で十分な対策を取っていた場合は、決議取消事由には当たらないとすべきだとする提言を行いました。これに対し経済産業省は、決議取消事由(会社法第831条第1項)や決議不在事由(同法第830条第1項)の該当性については、通信障害が起きたタイミングや議事への影響度にも左右されるため一律に結論付けることは困難であるとした上で、以下の具体例を示しています。

  1. 株主側の通信環境の不具合等により通信障害が生じた場合
    決議取消事由となることはないと解することは可能である
  2. 通信障害が採決のタイミングで起こり、大多数の株主の議決権行使が妨げられたような場合
    決議取消事由と評価される可能性がある


電子帳簿保存法の改正について

 これまで電子帳簿保存法の適用を受けるためには事前に所轄税務署長の承認を得ることが必要とされていましたが、令和3年度の電子帳簿保存法改正において同法第4条「事前に所轄税務署長の承認を受けた場合には」が削除されました。
 この承認制度の廃止は、国税関係帳簿に係る電磁的記録保存の場合は、令和4年1月1日以降開始する事業年度に係る国税関係帳簿から、国税関係書類に係る電磁的記録の保存及び国税関係書類に係るスキャナ保存は令和4年1月1日以降保存を行う国税関係書類から適用されることになります。
 今回の改正では、令和4年1月1日以降に備え付けを開始する電子帳簿は「優良な電子帳簿」と「その他の電子帳簿」に区分され、優良な電子帳簿を備え付けている場合は、申告漏れに課される過少申告加算税が5%軽減されます。ただし優良な電子帳簿として保存するためには、所定の保存要件を満たした上で、所轄の税務署長宛に届出書を提出する必要があります。
 また新制度への移行にあたっては、現行の承認申請の取りやめ及び新たな届出が必要となります。国税関係帳簿について現行制度で電子帳簿の承認を受けていても、優良な電子帳簿として過少申告加算税の軽減措置を受けるためには改めて届出書を提出する必要があります。

  PDF   資料①